ななみんと握手するためにはじめて乃木坂46の握手会に行った話

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乃木坂46の握手会に行ってきた。

理由はななみんと握手がしたかったから。

ななみんが卒業してしまうので今回の握手会が東京では最後らしい。

 

まさか自分がアイドルの握手会に行くなんて想像すらしていなかった。以前の僕は握手会というイベントに対して否定的だった。汚い大人が考えた金儲けのシステムだと思っていたし、何回も握手するためにCDを何枚も買っているファンに引いていた。しかし、行ったことがないのに悪く言う先入観はよくない。一度くらいは行ってみたいという好奇心もあった。現場はどんな雰囲気なんだろうか。行ったら行ったで楽しいのかもしれない。どうせ最後だ、行ってみようか。でも、なんか新しい扉を開いてしまいそうで怖い。会いたいけど会いたくない。人見知りなんすよ僕。緊張するじゃないすか。あーどうしようかな。というか、ちょっとまって、

 

つべこべ言ってないで行きたいなら行けよ

 

迷っている時点で行きたくて仕方ないということを素直に認めたほうがいい。まさか自分がアイドルの握手会に行くなんて思ってもみなかった。人はここまで変わる。細かいことを気にしていては人生はつまらない。

 

結果的に僕はこの日、乃木坂の握手会に行って大変貴重な経験をした。壮絶な1日だった。人生観が変わりそう。そんな壮大な1日をなんとか共有できたら幸いである。

 

11/23(祝日)幕張メッセで行われた乃木坂46全国握手会。これが関東でななみんと握手できる最後のチャンスということらしい。

公式サイトで詳細を見ると、どうやら握手会と一緒にミニライヴも見ることができるらしい。ミニライヴは朝の9:00開場・11:00開演。握手会は13:30〜。そして、その下に「整列開始時間:6:30」と書いてあったのが気になった。

え?なに、みんな朝の6:30とかから並ぶんすか?

さじ加減が分からなくて不安になった。時間の感覚が全くわからん。

一応、海浜幕張までの時間を調べると、始発の電車に乗ったとしてもそんな時間に幕張メッセになんかたどり着けない。一応当日は早めに起きてみよう。6時には起きようか。

 

当日:

7:30 起床 結局寝坊した。

8:30 出発 

10:30 海浜幕張駅到着

ミニライヴは11:00スタートなので、なにげに時間がギリギリだった。焦った。どうせならライヴも見たい。きっと会場付近は人で混雑しているだろう。30分でたどり着けるだろうか。会場に向かいながらTwitterで現場の様子を検索したら、幕張近辺がこんな状況だった。 

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イベントがすごいことになっていて震えた。幕張がカオス。駅とかすごい人なんじゃないの…?

そして、乃木坂のミニライヴを見るための人の行列がこんな状況らしい。

 

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ちょっと意味がわからない。

えっと、赤の線が駅から会場に向かう道のりで、青い線が行列らしい。線路こえてるじゃん。2キロくらいありそう。どういうことなの…。

もうこれは絶対無理だ。ライヴは諦めよう。と、完全に心が折れたけど、ダメ元で並んでみようかと、せっかく早起きしたんだし。

10:30くらいに海浜幕張駅に到着し、ひとまずこの地図の最後尾という付近に向かってみた。列に並ぶと、意外と列の動きがサクサク進んでいて、5分前くらいには会場に到着し中に入ることができた。そして11:00に入り口が封鎖された。あぶなかった。

 

11:00 ミニライヴスタート

幕張メッセの9〜11ホールをぶち抜いての会場。広い。約2万人が集まっていたらしい。ライヴ自体は会場の半分くらい埋まっていた感じ。最近ではノットフェスと同じ会場と考えると、乃木坂の握手会のためだけの会場として使うなんてすごい規模だと思った。

入ったのもギリギリだったし、かなり後ろのほうだったので、ステージは人の隙間からかすかに見える程度だったけど、中に入れただけで十分に満足。

ミニライヴは今回発売した16thのシングル曲とそのカップリング(計5種類)を全曲披露するという内容だった。

そのカップリングのなかで僕は「あの教室」という曲が気に入った。齋藤飛鳥堀未央奈のユニット。PVがシュールでとても素晴らしい。

 

1時間ほどでミニライヴはあっという間に終わった。

しかし、ミニライヴが見れたのはすごくお得な気分だった。1600円で買ったCDのおまけと考えるとお得。だって普通にライブを見に行った規模なんだもん。

 

で、いよいよ、握手会が13:30からはじまるのだけど、一旦客は外に退場して、改めて入場するらしい。そのあいだ会場は握手会の準備をするようだ。規制退場で2万人がゾロゾロとちょっとずつ退場。僕が外に出たのは12:30くらいだったと思う。

 

12:30〜13:00 トイレ

握手会に並ぶ前にトイレに行っておきたかった。近くにトイレが物販スペースに一箇所しかなく全然列が進まなく30分以上並んだ。会場のトイレ少なすぎ。

 

物販ブースでは特典グッズのポスターを手にした人達で賑わっていた。CDの購入特典は、「握手ができる」「ポスターを貰う」「ミニライヴを見る」の3択らしい。ポスターを複数貰ってる人達が多数。一体みんな何枚CDを購入したんだ。恐ろしい。

 

さて、いよいよ握手会の列に並ぼう。

会場の外に「待機列」と呼ばれる列があるらしい。

 

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えっ

  

すごい人の列である、人がごみのようだ。これまだ会場の外なんだぜ…? 僕は現実に直面した。とりあえず最後尾は一体どこなんだ。というかどういう列になってんのよ。

 

13:15 外の待機列に並び始める。

とはいえ、意外とスルスルと動くのでそこまでストレスではなかった。列に並んでいる人たちもみんなウキウキと楽しそう。僕は一人で暇だったのでiPhoneツイッターばっか見てた。いまのこの状況をずっと調べていた。充電がどんどんなくなってゆく、充電器を持ってこなかったのが致命的だった。

どうやら、女性を先に優先的に並ばせているらしい。やけに行列が野郎ばっかだと思っていた。乃木坂のファンって男しかいないのかと思ったよ。

朝、向かう途中の駅で買ったパン2個を食べながら並んだ。

 

14:20 会場入り口到着

外の待機列にひたすら1時間並んでようやく会場の入り口に到着した。入り口は係員が一人ずつ「荷物検査」「金属探知機でのボディチェック」を行っていた。空港なみのセキュリティ。そして、ペットボトルなどの飲み物を持っている場合は「一口飲んでください」という徹底ぶり。金属探知機でズボンのベルトが反応したので、テンパった僕はベルトを外そうとしたら係りの人に「外さなくて大丈夫です」と冷静に言われ、無事に入場をした。

 

ひとまず、会場の中をざっと散策してみた。ざっくりと図にしてみたのでごらんください。

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会場に入場すると会場内は自由に動けるようだ。

握手する場所にメンバーが横並びになっていて、握手したい人の行列に並ぶという。購入したCDに握手券が1枚ずつ同封されているので、1枚につき一人(二人の列もある)と握手ができる。握手券を複数もっている場合は、行列にまた並べば何度でも握手ができる(時間と握手券があるかぎり)というシステムらしい。

会場内でもCDを売っているブースがあり、握手券を消費してもCDを買えば何度でも握手できるというスタンスなのが恐ろしい。

 

まず、行列の全貌を把握しときたいと思い、それぞれの行列の様子をざっくりと見て回った。

 

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ななみんの列がやばい。

おわかりいただけただろうか。右側の赤い線がななみんの列である。線が細くて目が痛くなるが、縦に12回折り返して、さらに上のステージ側にも列が伸びている。ちなみにこの会場の縦の長さは200mくらい。縦の200mを12往復 + 横の100mを10往復くらい。合計3.4キロくらいの列なんだけど、このやばさ伝わっただろうか。あらためて数字にすると頭が痛くなってきた。

 

ななみんの次に西野、白石、飛鳥の列が特に長かったという印象。

というか、この列の長さでメンバーの人気が如実に分かっちゃう。残酷なイベントだよ。今回はななみんが卒業で東京での最後の握手会ということで、ななみんに列が異常に偏っている特殊なケースだったので普段とは違うのかもしれないけど。

実際、並ぶ前はその全貌がいまいち分かってなかった。「やっぱななみんの列ながいなー」くらいに思っていた。まあ長くても3〜4時間くらいかなと。なんの迷いもなくななみんの列に並んだ。

 

14:30 橋本奈々未レーンに並ぶ

そこからひたすら並んだ。ただただ並んだ。並んでて思ったのは、みんなマナーが良かった。とくに騒ぐ人もいないし、みんな静かに並んでいる。特に大きな混乱やトラブルもなく、ちゃんと順番を守ってキレイに列を作っている。この国の独特な秩序というものがあった。ドルオタはすごい。彼らは十分に訓練されている。どこでこんな高度な訓練をうけたのだろうか。

僕は並んでいる間、暇だったのでずっとiPhoneをいじっていたのだけど、そろそろ充電がやばい。充電器を持ってこなかったのは痛い。小説や任天堂DSなど暇つぶしアイテムを持ってきている人が結構いた。自分ももっと準備してくればよかった…

 

17:00 入場受付終了

17:00になると、「会場の入り口の受付が終了となります。」というアナウンスが流れた。入り口を見るとシャッターが閉まっていた。

 

17:15 1〜4レーンの受付終了

1レーン 橋本 2レーン 西野 3レーン白石 4レーン 飛鳥、のレーンの4列の最後尾が閉じられた。この4つの列が特に長かったので、早めに切ったのだろう。

 

公式サイトでは「18:00 終了(予定)」と書いてあったけど、この時点で僕はまだようやく縦の列に進んだくらいだった。まだ半分も進んでいない。あと1時間では到底たどり着かない。18:00で強制終了なのか、時間が許す限りやってくれるのかどっちなんだろうかと不安だった。

周りの人の会話を聞くと「このペースじゃ、20:00くらいまでかかりそうだ」とか言っている、18:00をすぎてもやってくれそう。じゃああと3時間もあれば間に合うかな….。時間の感覚はすでに麻痺していた。「良かった…あと3時間並べる…」と、並べることを嬉しく思うようになっていた。ストックホルム症候群に陥っていた。

 

17:30 休憩

17:30からメンバーが交代で15分ほど休憩に入ります。というアナウンスが流れた。そりゃあそうだ。並んでいるほうも辛いけど、ずっと握手し続けているほうも辛いに決まっている。休憩の間は列が止まるので、みんなその場でしゃがんで休憩をした。ここまで3時間並んでいる。足はパンパンだ。

そして、このあたりでiPhoneの充電が切れた。暇つぶしの道具を失った。孤独との戦いでもあった。

 

18:00 再開

一度座ってちょっと足が楽になったのか、再び列が動いた嬉しさなのか、足取りが軽く、周りの人たちの顔にも少し笑顔が戻った。それまでみんな死んだ顔というか、無の表情。もう「無」の極地ですよ。これはなんの修行なのか。悟りが開きそう。やることがなさすぎて行列の人の顔を見ながら並んでいたら人の顔を見すぎて人に酔った。

 

19:30 休憩

たしかこれくらいの時間に2回目の休憩があったと思う。列が完全に止まり、みんなその場で座った。

 

20:00 再開

会場では今回のシングル曲(カップリングも)がBGMとしてエンドレスで流れていたんだけど一体何回聴いただろうか。さすがに飽きる。聴きすぎて頭がおかしくなりそうになった。確実になにかしらの洗脳を受けたと思う。

 

そしてこんな会話が聞こえてきた。

「これから俺たちなにすんだっけ、あ く し ゅ するんだよね?」

「そうだよ。握手するんだよ。俺たちは。」

「並びすぎて分かんなくなってきたよ…」

 

思えばこの日1日、並ぶことしかしていない。並ぶことが目的なんじゃないかって不思議な錯覚になっていた。この錯覚はこれだけ長時間並んだ人にしかわからない感覚である。そろそろ限界だった。

 

イギリスの有名な登山家が「なぜ山に登るのか?」の質問に「そこに山があるからだ。」と答えたという名言があるが、いまならその登山家の気持ちがわかる。「なぜ並ぶのか?」と聞かれたら「そこにななみんがいるからだ。」と答える以外ない。僕ももうそろそろ限界だ。思考がやばいところまできていた。

 

腹も減ってきた。そういえば昼間食べたパンからなにも食べてない。

 

21:00 18歳未満優先

21:00頃、アナウンスが流れた。「18歳未満の方は優先的にご案内しますので、列から出てこちらに集まってください。」と。列がザワザワした。そして18歳未満の人たちがどんどん列から走っていなくなった。「走らないでください!走らないでください!」とスタッフが大声で誘導していた。我々の列はおっさんばかりが残った。

そりゃあ、18歳未満をこんな時間まで会場に残すわけにはいかない。22:00までには外に出さないといけないんだろう。仕方ない。大人は我慢しよう。

しかし「あいつ絶対18歳未満じゃないだろ」っていう、子供の付き添いとかではなさそうなあきらかにオッサンもちらほら混じっていた。なんて図々しいのか。メンタルが強すぎる。鉄のハートの持ち主だ。我々大人の列はみんなうらめしそうに18歳未満の列を見ていた。「え?行ったもん勝ちなの?」しかし、ここまで並んで、そんなセコいことをしたくない。

それまでみんな黙々と静かに並んでいた秩序が崩れた瞬間だった。列の長さからあと何時間くらいだという計算が崩壊した。「あとどれくらい」を希望の支えにして並んでいたのだから。いままで文句ひとつ言わなかった人達がはじめて動揺し騒然となった。

18歳未満の列が履けるまで22:00までかかった。その間ずっと座ってひたすら待った。

 

そろそろ終電の時間が気になる。しかしiPhoneの充電が切れたので電車の時間が調べられなかった。後ろに並んでいる人に事情を説明して、終電の時間を調べてもらった。終電の時間は23:22と教えてもらった。ありがとうございます。助かりました。ということは23:00には会場を出れば間に合う。これであと1時間は並べる。

 

22:00 再開

22:00にようやく列が動いた。それまでよりも列の動きが急にスピードアップした。時間も時間だし早く終わらせようという空気になっていた。だって、僕の後ろにはまだ1000人くらいいる。もうななみんもいい加減限界だろう。「一言お疲れ様って言えればいいね。」「もう顔さえ見れればいい。」「会えるだけで十分。」という声が飛び交った。

それでも列は何度か完全に止まってしばらく動かないときが多々あった、休憩のアナウンスが無いが休憩しているんだろう。ななみんはもう限界なのか?

列が止まるたび「本日は終了とさせていただきます」というアナウンスが流れるんじゃないかとビクビクしていた。「無理はしてほしくない」と「一目会いたい」の2つの気持ちが揺れた。

「列、全然動かないね。もうななみん帰ったんじゃない?」

「そんなわけないだろ!いるよ!いるいる!これから会うんだよ!」

「8時間も並んだんだぞ!!」

そんな会話が聞こえてきた。もうみんな限界だ。その悲痛な叫びが届いたのかはわからないが、再び列が動いた。

 

最後の一列。いよいよだ。長かった。結局8時間並んだ。待機列も合わせたら9時間だ。急に緊張してきた。

 

22:30 ななみんと握手

握手をする際のルールというものが公式サイトに書いてあったので事前に読んでいた。「握手券をスタッフに渡す」「荷物をカゴに入れる」「手のひらに異常がないかをスタッフに確認」という工程があるということを予習していた。

 

順番がきて、握手券をスタッフに手渡し、鞄をカゴに入れた。ここまでは良かった。ポケットにiPhoneが入っていることに気がつき「このあとボディチェックがあるんだっけ…?」(ボディチェックはありません。)と、さっきカゴに入れた鞄にiPhoneを戻そうとテンパっていたら、もう自分の順番で、慌てて手のひらをスタッフに広げたら「違う違う!こっち!」とスタッフが言ってて、え?と横を見るとななみんが置物のように座っていた。あろうことか僕はななみんを通り過ぎていたのだった。

 

こっちにいたのか…!

 

ななみんの姿を発見してビックリしたあまり「あっ…ああ!」と情けない変な声が出た。

 

ななみんはその僕がテンパっている様子を見ていたのだろう、若干苦笑いだった。恥ずかしい。ななみんはすでに手を出していて「ありがとう〜」と言っていた。もうななみんはたくさんの人と握手するために手を固定して両手を差し出しているような状態だった。

僕はその手を握手するので精一杯だった。握手というか恐る恐る手を触ったという表現のほうが正しい。そして、おそらく自分は握手しながら無意識に会釈をしていたんだと思う。視界が下に下がってななみんが視界から消えた。そのとき自分は何か言ったんだっけ…?「ありがとう」的なことを言ったような気もするがよく覚えてない。

顔をあげて一瞬間があった、一言なにか言おうとしたが言葉がでてこなかった。その次の瞬間「はい!時間です!」とスタッフに剥がされて視界が横に移動してななみんが視界から消えた。

真っ白になっていた。

握手してからの記憶が断片的だ。

 

その間、およそ2秒。

 

一瞬の出来事だった。一体なにがおこった。9時間並んでこれか。

放心状態で家路に向かった。完全に燃え尽きた。

ななみんの顔があんまり覚えてない。若干苦笑いで手を出して待っている顔しか覚えていない。ななみんは苦笑いでも可愛かった。

 

僕は今後どんな行列でも耐えられると思う。9時間並んだ経験は一生忘れない。いい経験をした。辛かったけど楽しかった。行って本当によかった。

それにしてもアイドルって大変な仕事なんだなってあらためて思った。ななみんはこの日1日で一体何人の人と握手したんだろうか。悟りを開いたんじゃないかと。伝説となる1日だったに違いない。それに立ち会えたことを光栄と思おう。

 

そして

ななみんお疲れ様でした。

ありがとう。

 

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