夏の魔物 in KAWASAKI@川崎市東扇島東公園・特設会場 2017.9.10(sun)

夏の魔物」という音楽フェスに行ってきた。

このフェスはいつもは青森で開催される野外フェスなのだけど、今年は川崎での開催とのことで、都内在住の僕にもようやく行けるチャンスが巡ってきた。

このフェス、ずっと気になっていた。まず出演者が毎回すごい。ちょっとこのラインナップ見てほしい。

 

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すごくないすか。日本中のサブカルをかき集めまくったこの感じ。

ひとまずタイムテーブル貼っておきますね。

出演者|夏の魔物 公式サイト

 

このイベントの主催者は成田大致という男で、19歳の頃からこのフェスを主催していたという。青森にはライブやコンサートでミュージシャンがなかなか来てくれないので、自分で呼ぼうと思ったのがはじまりらしい。最初は小さなライブハウスのイベントだったのがフェスにまで発展したらしい。ミュージシャンに直接手紙やメールを送ったり、出待ちをしたりして交渉しているのだという。その行動力はすさまじい。毎回赤字で借金が1200万くらいあったけど、親に土下座をして払ってもらったとか。家族総出でスタッフとして手伝いをしてくれていたり。手作り感が半端ない。イベント自体がエモい。そんな夏の魔物も今年で12年目らしい。こんなイベントを12年も続けられてるって正気の沙汰じゃない。ちなみに成田氏はTHE 夏の魔物というバンドもやっている。

 

青森で生まれた奇跡のフェスが、今年は川崎で開催ということですごく嬉しかった。青森の人には申し訳ないけど今年くらいは都内在住の僕らにも楽しませてもらおうかと。

 

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川崎駅から無料シャトルバスで、30分ほど乗って会場へ。

 

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会場付近は、川崎の工場地帯と海が広がる素敵なロケーション。

 

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入り口。11:00オープンだったのだけど、はりきって10:30くらいに着いた。ちょっと早く来すぎた。オープンするまでのんびりと待った。

 

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会場のMAPはこんなかんじ。ステージが5個も密集している。

 

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11:00に入場。

ひとまずロマンポルシェを見に、レッドの魔物ステージへ。

 

11:20 レッドの魔物

ハルク・ホーガン体操

 ハルクホーガン体操ってなんだって思ったら、ラジオ体操の音楽に合わせてハルクホーガンのモノマネをするというシュールすぎる内容だった。ゆるくて和んだ。これがこのイベントのトップバッターである。朝からいいはじまり方だなって思った。

 

 

11:30 レッドの魔物

ロマンポルシェ。

舞台袖から出刃包丁を持った掟ポルシェが、B'zのウルトラsoulをBGMにステージに登場し、開口一番こう言った。

「チケットに12:00開演と書かれているイベントに、11:30から出演しているロマンポルシェです。」「2003年に、なんかの間違いでサマソニに出演したときも、10:00開演なのに9:45から出演していました。」「誰が前説だ!馬鹿野郎!!(エコー)」

そして、持っていた出刃包丁でキャベツの千切りをはじめ、ステージからキャベツを放り投げて曲がはじまった。彼らの音楽は先を行き過ぎている。まだ時代が追いつけていない。我々はいつになったら彼らに追いつけることができるのだろうか。

彼らの立ち姿はとても哀愁があった。なにかを貫いている男たちの姿は眩しい。

なにかいいものを見た気分になった。なにを得たのかわからないけど、なぜか元気になった気分になった。そんな悪い薬のような不思議な中毒性がある。きっといい人達なんだろうなって思った。

 

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こちらが掟ポルシェが投げたキャベツです。ご査収ください。

 

 

12:00 グリーンの魔物

バニラビーン

キノコ頭担当のレナと外ハネ頭担当のリサの二人組。60年代のレトロなスタイルが可愛い。実物はマネキンみたいで優雅だった。ちなみに僕はキノコ頭推しです。

 

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腹が減ったのでここはガッツリとステーキ丼。ガーリックバター味。

 

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ステージの後方は芝生があり、かなりくつろげる。快適すぎ。しかしこの日は終日ずっと暑かった。雲ひとつないめっちゃいい天気。

 

 

12:50 ブルーの魔物

にゃんごすたー

ドラムが上手すぎて話題の青森県ゆるキャラにゃんごすたー。確かにドラムが上手すぎる。X JAPANの曲を演奏していた。もしかしたらYOSHIKIよりも上手いかもしれない。音の粒が正確で、タム回しがなめらかだった。ハイハットを叩くときが可愛い。ハイハットを手で抑えてブレイクするときのドヤ顏がたまらない。

それにしてもドラムがカッコよければカッコいいほどなぜか笑える。ギャップ萌えにもほどがある。シュールすぎて笑った。中の人は一体誰なんだろうか。間違いなくプロだと思うんだけど。

最後、バラの花束を客にブワッと投げて終わった。にゃんごすたーカッコよかった。

 

 

13:10 ピンクの魔物

DOTAMA


最近人気のラッパーである。ラッパーって、もっとオラオラしてるガテン系が多いイメージじゃないすか。悪そうな奴はだいたい友達なイメージじゃないすか。でもこのDOTAMAはまず見た目がインテリ系。いままで勝手に思っていたラッパーのイメージと真逆である。あ、そっか、別に関係ないよね見た目なんて。そもそも日本のラップのパイオニアいとうせいこうがすでにインテリだった。

このDOTAMAさん、結構楽しみにしていたんだけど、隣のステージが近すぎて音が被りまくっていて、音が聞こえにくかった。残念。

 

14:15 イエローの魔物

二丁目の魁カミングアウト

ゲイの4人組によるアイドルグループとのこと。「ゲイだってアイドルをやってもいいじゃないか。」というコンセプトらしい。確かに別に誰がアイドルをやってもいい時代だと思う。やったもん勝ち。そもそもアイドルってなんだっけ。俺は音楽をジャンルで差別なんかしない。それって「性別とか関係ないし」という話に繋がるってことか?そんな繊細な話に発展すんの?いや、細けえことはどうでもいいよ。マイノリティサイレンという曲が厨二臭くて最高にエモい。カッコイイ音楽があればいい。それでいいじゃないかと。

 

14:45 ピンクの魔物

戸川純 with vampillia

先日のフジロックでの戸川純のステージがとても熱かったので、見逃せないなって思ったんだけど、ちょっと環境が悪かった。この夏の魔物というフェスは、とにかく出演者の数が多い。そしてステージが5つくらいあるんだけど、ステージの距離が近すぎる問題があった。Vampilliaのリハが15分くらい押して、隣のステージの演奏が始まってしまい、音がぶつかり合っていたのが残念だった。たぶんこの日の出演者のなかで一番繊細な音を出すバンドだったかもしれない。もうちょっといい音で聴きたかったというもどかしい気持ちに。

 

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夏の魔物といえばこのホタテが定番のソウルフードらしい。主催の成田氏の知り合いの漁師さんが提供しているらしい。夏の魔物に来たらこのホタテを食べないと気が済まない。みたいに人気なんですって。せっかくだからホタテ食べたい。と思ったら、絶望的なほどの行列だった。それでもどうしても食べたくて頑張って並んだ。たぶん1時間くらい並んだと思う。

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頑張って1時間並んでようやくありつけたホタテ。めっちゃ美味かった。プリプリで甘かった。苦労しただけあって味も格別である。

 

 

18:00 ブルーの魔物

Maison book girl

4人組のアイドルなんだけど、エレクトロニカにこだわった楽曲がとにかく素晴らしい。普通こういう曲調ってドルオタには響かない。ましてや変拍子なんてなおさらである。ドルオタというのはわかりやすい4拍子で飛び跳ねたい生き物なのだ。しかしこの媚びないスタイルは貫いてほしい。このカッコ良さを信じてほしい。

roomsという曲を一曲目にやったのだけど、この曲は途中ちょっと長めのブレイクが何度かあるのだけど、前の出演者とのインターバルが短かったために、前の出演者のファンがライブの余韻でザワザワしていたのが、途中から徐々に静まっていく感じが気持ちよかった。「お?なんだ?」ってみんな黙って聞き入ったのかなって。

 

 

18:15 イエローの魔物

MOROHA

ラップとアコースティックギターのデュオ。

ギター1本とラップでこんなにエモくなるのかと。胸ぐらをつかまれてずっとぶん殴られているような音楽。だけどたまに優しくなって焼きそばパンを奢ってくれそうな音楽。ツンデレか?

くすぶってる奴ほど感動する、なにかに真剣になっている人ほど鋭く突き刺さってくる音楽なのかもしれない。これを聞いてなにも感じないのなら、きっと疲れているんだ。真剣になりすぎて疲れているのかもしれない、いますぐ寝てゆっくりしたほうがいい。

おそらく、その日の体調に左右される音楽かもしれない。それくらい振り切ってるっていうことなんだと思う。

 

 

18:50 ホワイトの魔物

ZAZEN BOYS

僕はいままで色んなバンドのライブを見てきたなかで、自分なりに日本ではtoedownyが最強だと思っていた。(現在も活動中のバンドで)いや、慌てるな、日本にはまだZAZEN BOYSというバンドがいるではないかと。なんですかこのグルーヴは。どうなってるんですか。カッコ良すぎて震えた。いやちょっともう格が違いすぎてビビった。

もうね、プログレすぎて「なにこのリズム!??」って訳わかんなかった。でもその訳わかんないリズムを超絶タイトな演奏で無理やりわかるようにするんですよ。輪郭をハッキリさせて。なにあの技術?発明??

こんなヒリヒリした音楽、インストだけでも数少ない存在なほど十分カッコいいバンドなのに、そのうえ向井秀徳の歌もあるってすごくないすか。無敵すぎやしませんか。

あとなんか、途中で、ピタッとブレイクになり、しばらく静止したあと、ドラムが「ズンチャ!ズンズン!ズンチャ!ズンズン!」って感じでリズムを声でやってるときがあって、ベースとギターも一緒になってやって、その間向井秀徳は静止したポーズをキメながら優雅に缶ビールを飲んでて、で、次の瞬間またガッ!って演奏が再開したという。

なにこれ?!!

ちょっとカッコ良すぎて言葉を失った。

やっぱり向井秀徳は天才すぎる。頭おかしいんじゃないか。

間違いなくベストアクトはZAZEN BOYSでした。

 

 

19:25 イエローの魔物

BiS

BiSというアイドルは伝説だった。地下アイドルの最高峰。地下アイドル界の最高到達地点。パフォーマンスが過激だと話題になった。アイドルがどこまで過激なことができるかの限界までチャレンジしたグループだったのかもしれない。その限界まで登りきってBiSは2014年の武道館で解散した。

そんなBiSが去年2016年に活動を再開したというので、「あの伝説のアイドルが見れるのか」という感じで臨んだわけです。

ライブが始まる直前、アナウンスで「危険な行為などはお控えください」的な注意喚起が流れ、緊張感が増した。客は物凄い暴れまくってカオスになるのではないかとビビっていた。ZAZEN BOYSのときわりと前のほうで見ていて、ほぼインターバル無しで間髪入れずに始まったのでちょっとアタフタした。

モッシュピットを避けて横のほうに避難したので、意外とゆっくりと見ることができた。真横からステージとモッシュピットを見るアングルだったのだけど、モッシュピットの熱気が湯気になって雲が生成されるんじゃないかというような勢いで霧になっていたのが、すごい景色だなって思いながら眺めていた。

最後、nerveという曲で人の波が大きく左右に揺れ、サビの指を差しにステージに群がる光景も見ることができて大満足であった。

 

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事前のアナウンスでBiSの撮影はOKとのことで、プールイさんにレスをもらえた。

 

 

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めちゃくちゃ腹が減ったのでスタ丼を。にんにくが効いてて美味い。塩分が体にしみる。

 

 

20:40 イエローの魔物

大森靖子

前日、BAYCAMPというフェスが、この夏の魔物と全く同じ場所で開催されていて、大森靖子はその両日出演をしていた。前日のBAYCAMPで、yogee new wavesというバンドと揉め事があった。

大森靖子が「音楽は魔法ではない!」と連呼して歌う曲を最後にやっていて、その直後に出演したyogee new wavesのボーカルが「音楽は魔法だよ」と言ってライブを始めた。そのことに対し大森靖子ツイッターで激怒していたのである。

自分の歌を否定された気分になったのだろう。「音楽は魔法ではない」と言っているが、この曲の最後は「でも音楽は…」で終わっている。その余韻に色んな思いが詰まっているのかもしれない。それを軽々しく茶化された気持ちになってしまったのかもしれない。そんなことがあった翌日の、しかも同じ場所でのライヴなので、それはそれは今日は熱いライヴになるに違いないと、僕は期待をした。

大森靖子は感情を爆発させて表現するタイプのミュージシャンなので、怒りが表現を助長するのだと思っていた。そして彼女は確信犯的な自分プロデュースが上手いタイプのミュージシャンだと思っていた。椎名林檎みたいなタイプかと。冷静に客観視して表現をコントロールしているのかと思っていた。

しかし、そんなことは我々ファンの勝手な思い込みで、彼女は思った以上に傷ついていた。ライヴ中泣きながら歌ってる姿を見て僕は胸が締め付けられる気持ちになった。

大森靖子は「みんなが温かくて嬉しい」と、最後に下に降りてみんなの近くで歌いたいと言いながら、ステージを降りてアカペラで歌いながら客の人混みに姿を消した。歌声だけが聞こえるがどこにいるのかわからず見失い、僕は大森靖子の姿を探した。声がどんどん遠くなっていって、このままライヴが終わるのかと思い、少しさみしい気持ちになった。その瞬間、前方の立っていた人達が次々と地面にしゃがみだしたのである。まるでモーゼの十戒のように。僕も慌ててしゃがんだ。その場にいた客はみんなしゃがんで大森靖子の歌を聴くという光景に。たぶんこれ自然発生的に起こったんだと思うけど、その光景が神々しくて感動した。

前日に「音楽は魔法ではない」「音楽は魔法だ」で、色々揉めていたけど、僕は少なくともこの瞬間は大森靖子の音楽に魔法を感じた。

 

 

こうして、僕の夏は終わった。めちゃめちゃ内容の濃いフェスだった。

充実感に満ちて余韻に浸りながら家路に向かった。

夏の魔物、最高に楽しかった。

また是非川崎でやってほしいと切に思う。