Sigur Rós @ 東京ガーデンシアター 2022.8.26.(Fri)

 

シガーロス素晴らしすぎました。

いままで見たなかで間違いなくベストアクトでした。

いや、生涯のベストアクトと言ってしまってもいいかもしれません。

 

会場は東京ガーデンシアター、最寄駅は国際展示場、すぐ隣に有明コロシアムというスタジアムもあるんですけど、そっちではビリー・アイリッシュの公演もやっていたらしい。シガーロスの客とビリーアイリッシュの客で国際展示場駅周辺がめっちゃ混雑していた。

駅から東京ガーデンシアターの会場に向かう際、「こちらはビリーアイリッシュではございません!シガーロスになります!」という案内がレアだなって思いながら会場入りした。ビリー・アイリッシュも観たかった。

 

シガーロスは今回、5年ぶりの来日、9年ぶりのキャータン・スヴェインソンの復帰とのことで、キャータンが戻ってきたのは嬉しかった。やっぱシガーロスの音楽には彼のピアノが絶対に無くてはならないと改めて実感しました。

一曲目のVakaのピアノが鳴った瞬間、目の奥が熱くなりました。この曲、本当に好き。

というか、もう一曲目のVakaの時点でベースの低音がエグかった。今回のシガーロス、いままで以上に爆音だったし、低音が凄かった。

 

 

ところで、シガーロスの音楽って静と動の振り幅がすごいですよね。静と動の差が激しすぎ。今日は特に動のグルーヴがマジでエグかった。会場のスタンド席が崩れ落ちるんじゃないかって勢いだったと思う。

どんなハードコアバンドよりも轟音で、どんな大自然よりも美しいアンビエントでした。

もうアンビエントな音が限りなく自然界に近づいてるというか。「あれ、今なんかいい風吹いた?」みたいな。と思いきや、いきなりズドーンと雷が落ちたみたいな爆音が響いたり、大嵐になったり。火山が噴火したり。真冬の凍てついた寒さになったり。もう、自然界の雄大な風景を見ている気分になってくるんです。

きっと彼らはアイスランドの壮大な大自然の風景を見て育った人達だから、そういう風景が浮かんでくる音を鳴らせるんだろうか。そういう空気というか空間を表現できるんだろう。音楽って本当に不思議ですね。

それにしてもヨンシーのギターはいまだにどうやってあのサウンドを出してるのか解らない。ギターの弦にバイオリンの弓を擦ってギュイ〜ンって歪ませた音を出すんだけど、何度観てもいまだにわからん。なんであんな美しいノイズを縦横無尽に操れるのだろう。

ヨンシーの弓を操る姿が魔法使いに見えて仕方がない。このバンドはファンタジーすぎる。

 

ところで、

今回は東京ガーデンシアターという場所だったのですが、会場がオペラハウスのような造りの会場で、僕はスタンド席のわりと前のほうだったので、非常によく見えやすく快適でした。アリーナもスタンドも全員着席でゆったりと鑑賞するというスタイルでした。まあ、シガーロスのような音楽は、クラシック音楽かのような価値観でゆっくりと鑑賞するには適している環境だなと思いながら見ていたのです。

コロナ感染予防のため、客は全員マスクをし、歓声もあげず、曲が終わるたび拍手して応えるという、今のご時世のスタイルでありました。

で、曲が終わったと思って拍手したら、まだ曲が続いてて、「あ、まだだった…」って、気まずくなる、みたいなのってあるじゃないですか。ただちょっと長いブレイクだった。という。で、曲の続きを聴こうと思ったら、またブレイク(無音)になったんですけど、さっきよりちょっと長いんです。ちょっとどころか、1分くらいは止まっているのです。ステージのメンバー4人全員が微動だにせずに静止していました。約1分くらい。客も全員。8000人のキャパの会場で、全員が微動だにせずに固唾を飲んで完全に静止してました。周りを見渡すとステージ上のメンバーはまるで蝋人形のように微動だにせず止まっているので、あれってなった。

 

えっ、時間止まった?

おまえ…タイムリープしてね?

 

まじで時が止まったかと思った。自分以外みんな時間が止まっちゃったのかと思ってドキドキした。8000人が静止してる光景はかなり異次元でした。会場の空調の音だけやけに聞こえていた。なんかあとでこの現象を調べたら「無音チャレンジ」と称されていた。我々は試されていたのか。

 

そして約1分の静寂の次の瞬間、ヨンシーは腕を振りかざし、再び轟音のグルーヴの海に包まれた。このときの爆音がすさまじかった。

このギャップ萌え。なにこの振り幅。

 

そして、今回2部構成だったらしく、途中で15分の休憩があった。メンバーがはけて客電が点いて、一瞬「え?!もう終わり!?まだやってない曲がいっぱいあるよ!」と、うろたえたが休憩だった。なんだびっくりした。

 

 

15分のインターバルのあと、再開の曲が「glosoli 」という。

みんな「glosoli 」大好きだもんね。なんならこれを聴きにきたまである。やっぱり今日はいつもよりも低音がエグい。シガーロスってハードコアとかメタル要素ありますよね。ヨンシーがなんかのインタビューで「僕らはメタルバンドです」って言って冗談だと思われて失笑されたみたいなエピソードがあるけど、あながちメタルバンドで全然合ってる。しかし、この曲の後半のクライマックスはどんなバンドにも出せないグルーヴだと思う。シガーロスでしか体験できないグルーヴ。

というか、このバンド、ずっとクライマックス。ずっと大団円。

 

 

そして、「festival」という曲で、後半になるにつれて壮大に盛り上がる曲なんですが、最初はアンビエントな曲調で、途中から徐々に壮大になってゆく曲なんですが、リズム隊の刻みが入る展開が「くるぞ!くるぞ!」といつもアガる曲なんです。そのリズム隊が刻みだしたところで、珍しくヨンシーが客を煽っていた。ステージを前のめりに客席を煽っていた。煽ると言っても無言で。アリーナ席やスタンド席に向かって無言で視線を向けていた。そのヨンシーの姿に客席はみんな手を振ったり拍手をして応えていた。ヨンシーが僕の席のエリアの方に来たとき、僕も必死で手を振った。ヨンシーに見えるように必死に手を振った。この瞬間、いままで抑圧していたものが解放された気分になった。みんなの気持ちがひとつになった瞬間だと思った。僕らも本当はもっと歓声をあげて盛り上がりたい。僕はこのときじわじわと涙があふれて止まらなかった。

 

 

シガーロスの来日公演、素晴らしすぎた。

いや、本当に生涯のベストアクトかもしれない。観に行くことができて本当に良かった。多幸感に満ちた現場でした。

 


SIGUR RÓS World Tour 2022 | シガー・ロス ワールドツアー2022